アニマル・アシステッド・アクティビティ(アニマルセラピー)の推進

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私たちがフラットな関係性として着目していることの一つに、人と動物との関係があります。
中でも、動物との触れ合いを通じて人々の心身の健康を促進する活動があります。その一つが「アニマル・アシステッド・アクティビティ(AAA)」です。私たちは、人と動物とが互いに尊重し合うことで成り立つ活動であるという観点からこの活動に共感し、より広く社会に広まることを応援しています。
ちなみに、「AAA」は、日本国内では「アニマルセラピー」と呼ばれている活動の一つに該当しますが、この「アニマルセラピー」という呼び方は日本における造語になります。本コラムでは、人と動物との関係性を考えるにあたり、その活動の目的別に、国際的に広く認知、定義された用語で話を進めていきたいと思います。
 

AAAにおけるフラットな関係とは

AAAでは、例えば、セラピー犬とハンドラーによる、高齢者施設での訪問プログラムや、ストレス軽減・コミュニケーションの活性化を目的としたオフィスでの触れ合い、といった活動があります。これらの活動は、セラピー犬を介在させたクライアントの生活の質の向上ための活動、とされています。
ここで、AAAにおいては誰が誰を「癒やしている」のだろうか?という問いをもとに、私たちが尊重する「フラットな関係」について考え、その意義を抽出してみたいと思います。
 
これまでに経験したAAA活動のひとつ、高齢者施設での訪問プログラムというAAAの一例を見てみましょう。この場面では少なくとも次のような登場人物(アクター)がいます。
・セラピー犬 ・ハンドラー(セラピー犬の動きをサポートする役割の人) ・クライアント ・クライアントの家族 ・施設のスタッフ
この活動における期待される効果の「癒やし」とはどういった現象でしょうか。まず挙げられるのは、
・クライアントがセラピー犬の愛らしい姿をみて笑顔になる。
でしょう。しかし、このことに加えて、「癒やし」の現象と思われることをもう少し列挙してみましょう。
・セラピー犬がクライアントから優しく撫でてもらったことで安心感を得て笑顔を見せる。 ・ハンドラーがセラピー犬やクライアントの安堵する姿を見て癒やされる。 ・クライアントの家族がクライアントの喜ぶ姿を見て安堵する。 ・施設のスタッフとクライアントの間で微笑ましいコミュニケーションが生まれる。
といったような現象を目にします。
これらの現象だけをみても、AAAにおける「癒やし」は決してセラピー犬からクライアントへの一方向的なものではない、といえます。登場するアクターをフラットに捉えることで、AAAに関わる人間と動物が互いに影響を与え合うネットワークの中で、様々な「癒やし」が生まれるものと考えられます。
このように、人間と人間はもとより、人間と動物との関係も含めてアクターネットワーク理論(ANT)の視点から互いをフラットな関係として捉えることで、癒やす/癒やされるという現象が、特定の一方向的な作用ではなく、関係するアクター同士のネットワーク全体から生まれる現象として俯瞰できるようになります。
そして、このように俯瞰することで、AAAという活動を関係するアクターそれぞれにとってより良いものに変化させていく、新たな可能性を生み出す機会を提示してくれると考えています。
 
以上のように、私たちはアニマル・アシステッド・アクティビティ(AAA)をはじめとする動物介在介入(アニマル・アシステッド・インターベンションズ(AAI))という活動が、より広く社会に受け入れられることを応援しています。
AAAを通じて、人は動物との触れ合いから癒やしや喜びを得るだけではなく、動物の存在や感情を尊重することの大切さを学ぶことができます。同時に、適切に訓練された動物たちも、人間との触れ合いを通じて新たな役割や存在意義を見出しているかもしれません。このような相互尊重と共生の関係は、私たちが掲げる共感が響き合う社会を育む上での大きな示唆を与えてくれるものと考えています。
 
本コラムでは「癒やし」の一面を例に、AAAが秘める人と動物との関係に対する様々な可能性、そしてこのサービスのあり方を考える機会としました。
次回以降も、フラットな関係の視点から相互作用するネットワークをどのように捉えサービスをデザインしていくことが、共感社会に繋げていけることなのか、を考えていきたいと思います。